HIGHLIGHT 2022

02 脱炭素へ大きく前進
TOX工程に高度制御技術を導入
CO2排出量の約7割を占めるプロセスでの先進的省エネ

SDGs 9SDGs 12SDGs 13

脱炭素に向けて、当社富士工場ではこれまで困難とされていたTOX工程(POMの製造工程の一部)に高度制御技術を導入することに成功しました。これにより大幅なCO2排出量の削減が見込め、脱炭素社会への実現に大きく寄与できます。今後この技術導入は、海外の工場拠点にも展開されていく予定です。

CO2排出量の多いTOX工程に着目
従来のオペレーションを定量的にモデル化することに成功

化学プラントでは製造工程において大量のエネルギーを消費します。CO2排出量の大幅な削減を実現するためには、製造工程での省エネが欠かせません。特にPOMのTOX工程からのCO2排出量は、富士工場全体の約7割に相当することから、この工程における技術革新が求められていました。

figure figure
image

ハードルが高かったTOX工程

一方で、TOX工程のプラントは複数の蒸留塔が複雑に絡み合う構造上、全体最適化が非常に困難でした。TOX工程への高度制御技術導入のためには、これまでオペレーターが経験則によって定性的に制御してきた製造工程内の圧力や流量などの数値と製品品質との関係を、膨大なデータを基に定量的にモデル化する必要がありました。
当社は、富士工場の生産高度化を実現するため、2018年に富士工場再構築プロジェクトを発足させ、2021年からは同プロジェクトにダイセル式生産革新を取り入れました。ダイセル式生産革新では、工場課題のミエル化を通じた工場基盤の整備と安定化を行うことで、高度制御を導入する基盤が整い、一定以上の製品品質の確保が可能となりました。

その結果、複数の蒸留塔が絡み合う複雑な構造下においても高度制御技術を導入することができ、より品質のばらつきを低減できたことで、これまで以上の最適な運転が実現し、大幅な省エネに寄与しました。 また、高度制御技術には、TOX蒸留後の物質組成を予測するソフトセンサーが欠かせません。圧力などのプロセスデータと製品品質の関係を定量的にモデル化することで、新たにソフトセンサーを構築し高い精度で組成予測ができるようになったことも、今回の高度制御技術導入に大きく貢献しています。

高度制御技術とは

温度・圧力等の各プロセス変数と製品品質の関係を簡単な数式でモデル化・予測し、品質変動を未然に防止すべくプロセス変数を同時に制御して最適化する技術です。例えば複数の蒸留塔がまたがる複雑なプロセスの場合、人がすべてを把握し同時に操作することは困難であり、高度制御による全体最適は非常に効果的です。

富士工場再構築プロジェクトについてはこちら

年間約4,500tのCO2排出量を削減

今回の高度制御技術の導入により、富士工場全体で年間約4,500tのCO2排出量削減、さらには年間約34,000tの蒸気排出量の削減に成功しました。これは、TOX工程におけるエネルギーの削減によるものだけではありません。高度制御技術により品質が安定し規格外の製品が減少した結果、機械の再稼働などにかかるエネルギーが大幅に削減されたことも挙げられます。さらに副次的な作用として、これまで手動で行われてきた運転制御が自動化されることにより、オペレーター負荷が大幅に低減しました。

高度制御技術のさらなる進化と
海外工場への展開

グリーンなエネルギーへのシフトとともに、さらなる先進的な省エネに対するニーズがますます高まっています。今後は、富士工場で得られた技術的知見を基にTOX工程を有する海外の工場にも高度制御技術を順次展開し、グループ会社全体で脱炭素に向けた技術導入を加速度的に進めていく予定です。
当社の製品およびサービスを通して脱炭素を実現できるよう、グループ全体で環境負荷低減に向けた取り組みを拡大していきます。

figurefigure