環境・安全
2022年度環境負荷低減活動

プロダクトカーボンフットプリント46%削減への挑戦
~お客様にとって最適な“ミエル化”の実現~

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近年、製品やサービスを選ぶ際、品質や価格に加えて「環境的付加価値」が重視されています。そのような中、製品のライフサイクル全体を通して排出されるGHG排出量をCO2に換算して分かりやすく表示する仕組み(プロダクトカーボンフットプリント、以下PCF)の注目度が上がり、当社としてもお客様からPCFの開示およびその削減が求められるようになっています。

こうしたニーズに応えるため、当社は「2030年までにPCF46%削減(Cradle-to-gate basis、2013年比)」というチャレンジングな目標を掲げています。2022年はその達成に向けた第一歩として、当社製品グレード(2021年度当社販売実績グレード)の90%以上についてPCFの算定・開示準備(ミエル化)を完了しました。

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ただの“ミエル化”にとどまらない

PCFは国際標準のISO14067に沿って計算されますが、その際、入力データの種類、排出係数の精度、バイオマス原料を使用する場合や廃棄物を再度原料として使用する場合に対してどのようにアプローチするかが非常に重要になってきます。例えばPCFの算定にあたり、原燃料の実態を表す最新の一次データではなく、汎用的なインベントリデータを多用してしまうと、PCF削減に取り組んだとしても削減の出発点を正しく把握できないため、その効果も計測できなくなります。そのため実態に近い最新のデータをできる限り多く用いることが重要です。また、自社排出(Scope1, 2)においては、合理的なバウンダリー設定と正確なデータ集計でPCFを算定できる仕組みを構築することも、PCF削減活動を着実に進める基盤として必須です。

当社は2022年度、これらの課題に取り組み、お客様への情報提供と今後の削減活動を行う上で十分な精度のPCFを算定できるようになりました。さらに、お客様への迅速な開示を目指し、CRMを用いてPCFに関する計算結果を提供できる体制も整備しました。

  • Customer Relationship Managementの略
PCFの算定方法
PCFの算定方法 PCFの算定方法

削減はサプライチェーン全体が「ワンチーム」となって

PCFの算定が完了した今、2030年に向けた次のステップは「PCFの削減」となります。自社でモノマーやポリマーを製造している工程では、省エネやエネルギー転換などを積極的に進め、PCF削減を実現します。一方で、当社が掲げるPCF削減目標の達成のためには、それだけでなく原料や資材のサプライヤー、輸送業者、外注業者などのあらゆるビジネスパートナーの多大な協力が不可欠となります。
当社は今後、サプライチェーン全体で「2030年までにPCF46%削減(2013年比)」という高い目標を共有し、「ワンチーム」となってミエル化と削減活動を進めていきます。

今後の当社の取り組み

など

今後のビジネスパートナーとの取り組み

  • サプライヤー(原料メーカー)におけるCO2排出量削減(原料PCF削減の依頼)
  • よりPCFの少ないフィラーや添加剤の導入検討
  • 輸送時のCO2排出量削減

など

もう一歩チャレンジ

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当社製品の「Cradle-to-gate」のPCFだけでなく、当社製品が使われることによる削減貢献量(例:当社製品を用いた部品で自動車の燃費が向上することによるCO2排出量削減への貢献)も社会にとっては重要です。したがって、当社とお客様が「ワンチーム」となって製品開発に取り組むこともまた必要です。 これまでも当社は、お客様の製品の小型化・軽量化や長寿命化を通じて燃費向上や資源使用量の節約に貢献してきましたが、今後はより一層の環境負荷低減を目指して設計・開発段階からお客様との連携を深め、革新的なソリューションを提案していきます。

井戸水を活用した空調を導入

SDGs 7SDGs 12

2022年度、富士工場に約30年ぶりに新たなコンパウンドプラントが増築されました。

立地場所が近隣地区に近いことから、この建屋は騒音や臭気の漏れを防ぐために断熱性や遮音性の高い材料と構造で建設されており、夏場には屋内温度が上がりやすいことが懸念されていました。

そこで暑熱対策として、井戸水を有効活用した省エネ型の空調設備を導入しました。この設備は、井戸水の冷たい水温と室内や屋外からの吸気の温度の熱交換をすることで、通常の空調よりも少ないエネルギーで空気を冷やすという仕組みです。

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新コンパウンドプラント外観
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プラント内

空調で使用した水に不純物が混ざらないようにしているため、使用後の水は従来通りの工業用水として使われます。空調設備での使用を開始した後も富士工場全体での井戸水の使用量は変わらず、地盤沈下や水源、排水への悪影響がないことも、アセスメントを通して事前に確認済みです。

この空調設備の本格稼働は2023年夏からですが、環境に影響を及ぼさず、なおかつ省エネでの暑熱対策を実現できる見込みです。

  • 建物新設を伴った増強建設は14年ぶり、コンパウンド用のラインとしては31年ぶりの増築

臭気対策に優れた企業賞

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南通工場(中国)は2022年度、南通経済技術開発区(NETDA)政府より「臭気対策に優れた企業賞」を受賞しました。NETDA内の70社のうち当社を含む10社が最初の受賞企業として選ばれました。当社南通工場は、従業員が製造工程の臭気対策の改善提案を積極的に行っていることや、改善を進めるにあたって部門間でのチームワークができていること、そうした活動に対してマネージャーが人的・物的・資金的なリソースを与えたことが高く評価され、受賞に至りました。今後も引き続き、悪臭を発生させないよう製造工程の最適化を進めながら、活動の重要性の発信も定期的に行っていきます。

臭気対策の例

排水処理タンクに蓋をし、臭気を回収して処理

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サンプリング作業時に臭いが漏れないよう、密閉されたサンプル採取口を52箇所に設置

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漏洩による悪臭発生を防ぐため、合計約500箇所の排出口に漏洩防止対策を実施

photo操作頻度の低い排出口にはプレートをはめ(左)、操作頻度の高い排出口には二重バルブを取り付け(右)

グリーンローンで支える
環境負荷低減型の新プラント建設

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中国南通市の当社グループ会社・大宝理工程塑料(南通)有限公司では、POM製造のための年間9万トンの生産能力を有する新プラントの建設を進めています。新プラントには、これまでの当社中国工場よりも環境負荷の少ない製造プロセスを導入する予定で、以下のような効果が見込まれています。

新プラントの環境負荷低減効果例(見込み)新プラントの環境負荷低減効果例(見込み)

こうした点が高く評価され、新プラントの建設・運用資金の一部について、グリーンローンによる資金調達を実施することができました。本グリーンローンは、国際基準と中国国内の基準の双方への適合性について、外部認証機関(香港品質保証局)からの認証を受けたものです。
当社は今後も、本ローンによる資金を活用して新プラントの建設・運用を着実に進めるとともに、ビジネスパートナーと一丸となって、環境と調和する事業の推進に取り組んでいきます。

大気汚染・水質汚濁の防止

富士工場では大気汚染物質や工場排水による環境汚染を防止するため、以下の項目について常に監視し、法規制を順守しています。

窒素酸化物(NOx)排出量窒素酸化物(NOx)排出量
硫黄酸化物(SOx)排出量硫黄酸化物(SOx)排出量
ばいじん排出量ばいじん排出量
工場出口排水の化学的酸素要求量工場出口排水の化学的酸素要求量

「環境モニター会議」を開催

毎年6月に富士工場で開催している「環境モニター会議」では、近隣地域の皆様に富士工場の環境への取り組みをご説明し、工場内のモニタリングや環境関連設備などをご覧いただくとともに、意見交換を行っています。新型コロナウイルス感染症の影響により2022年度は3年ぶりの開催となり、近隣6地区16名の代表の方々にご参加いただきました。

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コメント

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工場内の設備見学ならびに環境報告を通し、環境汚染防止のためにさまざまな取り組みが実施されていることを知り安心しました。特に工場から出る騒音と臭気については、私たちの日々の生活でも実感が持てるほど静かで、臭いがすることもありません。さらに、工場長の真田様(当時)をはじめ、従業員一人ひとりの皆様が私たちとの対話を大切にされている姿が印象的でした。今後も地域との連携を密にとりながら、継続して環境に配慮した事業活動を行っていただけることを期待しています。